サラリーマンひも太郎

おかしな関係の同居女性

 

真面目な恋愛を探す人もいれば、気軽な遊び友達を探す人もいる。

 

 

そんな出会いアプリ界隈でも異色を放つ存在が『家出系女子』だ。

 

 

この日、仕事が終わった僕は、帰りにラーメンを食べて一人暮らしの部屋へ戻り、ゴロゴロと出会いアプリをしながらテレビを見ていた。

 

 

何人かにアタックし全然返事が来なくて、今日はだめだな と思い始めていた時、一通のメッセージを受信する。

 

 

 

 

 

『家にいたくないからすぐ会いたい』

 

 

 

 

内容から言って、ネットの出会いに抵抗が無い。

 

 

メンヘラの香りがプンプンする。

 

 

又は

 

 

業者の売春募集。どちらかだ。

 

 

ちょっとめんどくさそうだったが、返事を返す。

 

 

『すぐ会うかはわからないけど、悩みがあるなら電話で聞くけどするかい?』

 

 

と返信を送った。

 

 

※こうやって怪しい奴には『Hに興味の無い男性』をちらつかせた上で『電話の要求』を行うと、業者やネカマは撤退する事が多い。
業者は売春相手さがしが目的、ネカマは電話をできないし、真面目な男だとつまらないからだ。

 

 

 

 

すると電話番号が送られてきた。

 

 

かけると女の声、軽くメンヘラっぽい感じだが、業者やネカマではなさそうなので話を続けた。

 

 

どうやら親にDVを受けているらしく、父親だけの片親な環境らしい。

 

 

ガールズバーで働いていたがやめてしまい、家に居る事が多くなり、親との対立が絶えないのだという。

 

 

そっかそっかあ。大変だね」

 

(深く関わったらめんどくさそうだから早めに切り上げよう)

 

 

そうして、その日は30分くらい話を聞いてやり電話を切った。

 

 

よし、これ以上関わるのはやばそうだから、また電話来てももう出ないにしよう。

 

 

 

 

 

しかし翌日、夕方電話を見るとその女から着信が数回入っている。

 

 

仕事から帰宅してからも着信が入り、そして、出てしまった。

 

 

「どうしたの」

 

 

やっちまったと思ったが、案の定長電話が始まった。

 

 

どうしても家が嫌で離れたい。

 

 

友達にも同居を断られて困っている。

 

 

辞めたガールズバーにももう戻りたくない。

 

 

悩みを片っ端から聞かされた。

 

 

 

そしてさらに2時間後、僕はその女に会っていた。

 

 

まさか本当に近くの駅まで荷物をまとめてくるとは思わなかった。

 

 

普通の女性なら仲良くならないと、会うのすら大変なのに、知らん男の家にあっさり来るなんて、なんて女だ。

 

 

 

 

「日曜日までだからな」

 

 

僕は念を押した。

 

 

今彼女がいないとはいえ、長居されたらたまらん。

 

 

自宅で食事や布団を提供してやり、悩みを色々聞いてやった。

 

 

家庭環境が悪いとはいえ、不幸な女だ。

 

 

「ここで気持ちを整理して早く家に戻れよ」

 

 

数日だしまあいいか、そう思った。

 

 

ちなみに女にした質問で

 

 

他にも泊めてくれる男なんてネットにいくらでもいただろう?なんで俺の所に来たんだ?」

 

 

に対する回答は

 

 

「他の人は身体目的の人が多かった、あなたと電話した時は悩みを色々聞いてくれたから信用した」

 

 

だった。

 

 

僕もセックスはしたいが、最初から全開でいかなかったから信用されてたらしい。

 

 

しかし僕はこの時、エッチできる可能性より、こいつに長居されたらどうしよう。

 

 

という心配が先で、いつも元気なオチンポウさんはしょんぼりしていた。

 

 

次の日曜には絶対返す、次の日曜には絶対返す。何故か祈っていた。

 

 

 

 

 

3週間後、女はまだ僕の家にいた。

 

 

何回かセックスはしたが、恋愛感情はゼロでそれ程相性も良くなかったので、オナニーの方がいいくらいだった。

 

 

ただ家にも帰りたくない、他に行く場所もない、と言う女を無理やり追い出す訳にもいかず、展開的には一番なってほしくない『さらなる長居』へと向かっていた。

 

 

女は生活スタイルもだらしなく、洗濯、掃除、体調の管理方法、全て一から教えた。

 

 

「おいお前、そろそろ仕事したらどうだ」

 

 

彼女でもない同居相手に金を使うのもバカらしくなっていて、「もうしばらくココに居てもいいが仕事は探せ」と伝えていた。

 

 

そしてなかなか仕事が決まらない女に僕は動いた。

 

 

「お前はもう夜職しかない、紹介してやるからそのだらしない生活をやめろ」

 

 

知人のキャバ嬢に話を聞いてもらい、キャバクラとオッパブを掛け持ちさせた。

 

 

幸い女は、超美人でないにしろそれなりの容姿であったのが救いだった。

 

 

働き始めると、特に問題なく勤務しており、かなりの額を稼ぎ出していた。

 

 

 

 

そしていつしか、家賃、生活費、外食費、女がすべて出してくれている状況になっていた。

 

 

サラリーマンひも太郎』の誕生である。

 

 

女が休みの日には、僕が家に帰ると洗濯や掃除をしてくれている時もあった。

 

 

「お、おう、ありがとう」

 

 

立場が逆転する勢いで生活が一変していた。

 

 

彼女でも嫁でも友達でもない。

 

 

そんな女との意味不明な同居生活が続いたのは3か月間くらい。

 

 

生活費が女持ちとはいえ、僕が同居だとストレスを感じてしまった為、話し合いの結果、引っ越してもらう事になった。

 

 

その時もまた、出会いアプリで男を探していたのだろう。

 

 

『引っ越し先が見つかった』と報告があったので、最後は女を車で引っ越し先まで送り届けた。

 

 

ほっとはしたものの、二人から一人になると少し寂しいものだ。

 

 

こうして長いようで短いヒモ太郎生活は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

女との生活の中でこんなエピソードがある。

 

 

ある日女に頼まれて、とある駅に女を乗せて車で向かった。

 

 

駅に着いて待っていると、一台の車が現れて中年の男が降りてくる。

 

 

女はその中年男から何やら荷物を受け取り、少し話をしているようだった。

 

 

やがて僕の車に戻ってきたので、何の用だったのか聞くと、

 

 

『父親に荷物を受け取っていて、もう戻って来なくていいといわれた』

 

 

と語った。

 

 

普段楽観的で能天気な笑顔の中に、時折寂しい表情を見せた意味がわかった気がした。

 

 

誰しも家庭環境を選べるわけではなく、自分が強くなっていかなくてはいけないが、若い時に受ける親の愛情は取り戻す事ができない。

 

 

家庭が裕福でも貧乏でも、親の愛情は子供の運命を決めるのだ。


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